オランダレポート第三弾!デリとしても愛され続ける老舗。オランダ初のビオ&ヴィーガンカフェ「Vegabond」

「Vegabond」は、アムステルダムのヴィーガン文化を黎明期から支えてきた金字塔の様な存在だ。プラントベースという言葉が生まれ、昨今のトレンドが世界を席巻く以前から。コロナ禍により、テイクアウトやデリバリーのみの営業形態がオランダの飲食店に求められる以前から。多くのニーズを満たし、貢献してきた。

2014年、Jordaan地区の運河沿いに、オランダ初の完全オーガニックヴィーガンカフェ兼雑貨販売店としてオープン。陽射しが差し込む、運河を臨む大きなガラス窓。デリやペストリーが並ぶカウンターショーケース。クッションが並べられた備え付けのベンチとローテーブル。奥に一つ、合席の大きなテーブルとチェア、それをぐるりと囲む食料品と雑貨の棚、冷蔵庫が壁に備え付けられていた。

こじんまりとした佇まいのカフェながら、アンネ・フランクの家などセントラルに位置する観光名所にもほど近く、ベジorノンベジ、ローカルor観光客問わず、根強いファンに愛されてきたポピュラーな名店だ。

その同店が、2019年、Oud-westエリアのDe Clercqstraatに店舗を移転。より本格的なヴィーガンフードを提供するデリ部門に注力し、新しい展開をスタートさせた。

今まではフレッシュスムージー、サンドイッチ、ラップサンド、スープ、キッシュ、スイーツといった軽食メインだったメニューが、大幅にアップデート。

朝のキックスタートチャージ。一品だけおかずを買い足したい時。スナックが欲しい時。ランチボックスにコースディナー。幅広いシチュエーションに対応できる使い勝手の良さは、この上ない。

ショーケースに並ぶお惣菜。好きな分だけチョイスして、オリジナルボックスやプレートをオーダーできる。

 

パーティーなどのケータリングにも対応。美しいプレゼンテーションも定評がある。

 

これからの季節は、ボックス持参でピクニックに限ります。ホームオフィスのブレイクにもバッチリ。

 

ただのカフェ飯”や”大味”にとどまらない、クオリティの高さ

長年厨房で改良を重ねて来たからこそ、説得力のあるクオリティ。一品一品に、ありそうでなかったオリジナリティがある。ヴィーガン料理は、使う食材が限られる分、創意工夫が少しばかり必要なのは、読者の皆様もご存知の通り。

ただのカフェ飯にとどまらない、海外でありがちな大味に陥らない、日本人だからわかる繊細さにありつける貴重な場所だということは、移転前からのファンである筆者が保証しよう。(ちなみに、私の母が来蘭した際に同店を訪れたのですが、絶賛していました。笑)

大定番のThe Queens Quiche。クラストはアーモンドベースでグルテンフリー!ボリュームたっぷり!

「コリアンBBQバーガー」は、マッシュルームとレンズ豆と大麦のパテに、ジンジャーとアニスのスパイスがアクセントになっている。

その名も「Glorious Grains」、「レッドライスサラダ」、ファラフェルにインスパイアされ、アレンジを加えた「ひえとヒヨコ豆のパテ」など、マクロビにもフィットする全粒雑穀物をフィーチャーした品々が。たっぷり野菜とのコンビネーションや、ハーブや調味料の使い方も絶妙で、いつも新たな発見がある。

ローストパイナップルコールスロー、ハーブとスパイスの効いたインゲン炒めなど。

 

カウンターにずらりと並ぶペストリー。
ロー&グルテンフリースイーツも充実

カウンターには、焼きたてのスイーツやペストリーもずらりと並ぶ。クロワッサン、シナモンロール、カップケーキ、クッキーなどのベイクドものから、グルテンフリー系もかなり充実。バナナブレッド、ブラウニー、チョコムースケーキといった王道ケーキはグルテンフリーメイドで、キャロットケーキはローメイド。

同店のロングラン名物アイテムといえば、「自家製スニッカーズ」(ローメイド)!それと並び、ポピュラーなココナッツ風味のチョコレードバー「Bounty」のヴィーガンバージョンもある。こちらもロー。

自家製ヴィーガンフェタチーズパイやソーセージロールなどのスナックから、キュートな多種カップケーキ。

自家製グルテンフリーグラノラ入りの、アサイボールは、モーニングやブランチにも完璧。この写真で使われている、ココナッツをリサイクルした器も販売している。

 

今も昔も変わらず、
妥協と追随を許さないコンセプト

イートインスペースが広くなったにも関わらず、移転の翌年、コロナ禍で世界は様変わり。オランダの飲食店も、通常営業が不可能になったのだが、訪れる変化を察し、波乗りするかのようなタイミングでデリ形態への舵取りを切ったことを筆者は不思議に思った。「あなたはそれを感じていたの?」。創業者のBabetは「誰が予測できたかしら!」と笑って答えた。

「私たちは、思いやりを持って、少しは賢くやってきたとは思いますが、多くは運ですね。私たちは最初から、店舗とデリ&レストランの両方を営んできました。そうすることで、様々な分野でビジネスを展開し、複数の分野で専門知識を身につけることができました。コロナが発生し、レストランのテーブルを片付けなければならない必要が生じた時も、より食料品をベースにしたコンセプトに簡単に移行することができました」

当初から同店のスタンスは、基本的には変わらない。オーガニックスーパーマーケットは幾多あれど、オーガニックかつヴィーガンであることに特化した商品のみを取り扱う店舗として、追随と妥協をを許さないセレクションは、見事なブランディングを確立している。

例えば、チーズは時によるが数十種類も取り扱う。ついつい手を出したくなってしまう見たことのないスナック、スーパーフードブースター、ジェラート、例えばビエネッタ(実はオランダ発祥の製品です!)を彷彿させるアイスケーキ、日常のスパイスとしても調味料棚に加えたくなる捻りの効いた調味料、ご当地コンブチャにワイン。メジャーなスーパーで取り扱われていない商品を見かけた時、「やっぱりここは特別な空間なのだ!」と感じられる。価値があるって、そういうことなのかもしれない。

でーんとショップの奥に鎮座する冷蔵/冷凍庫には魅惑の商品が詰まっている。フレッシュチーズなどの入荷は適宜チェックすべし。

プラントベースに特化した食材以外の雑貨類もベーシックだけど、オリジナリティが。コスメやケア製品、アパレル、ローカルアーティストの作品など、環境にもフェアなセレクション。今も昔も、アップデートを重ね続け、愛され続けている。

 

https://vegabond.nl/

https://www.facebook.com/vegabondfood/

https://www.instagram.com/vegabondfood/

 

De Clercqstraat 48

1052 NH Amsterdam

+31 20 786 1254

 

ライター・田中麻姫子

大阪府出身。新聞記者として従事していた2011年、東北大震災をきっかけに意識と価値観の変容が起こり、ヴィーガンに。マクロビオティック、ローフードを実践。自他共に優しくあるため、サステイナブルな消費活動=出来る限りの未来への投資を意識したライフスタイルを送る。宇宙の法則、ホリスティックで有機的であることの意義を哲学し、ときめく日々。

ドイツ・ベルリン移住後、ローチョコレートのケータリングなどを行い、オランダ・アムステルダムのKushi instituut併設レストラン「Deshima」勤務のち、現地でフリーランスヴィーガンシェフとして、グルテンフリーピッツェリア「Mastino V」などで従事。

オフグリッドを目指し、占星術&ビオダイナミッシュを取り入れつつの自然農、ベルリンでのアーバンガーデニングプロジェクトに挑戦中。

himeee名義でDJや音楽活動も行う。

www.instagram.com/himeee/

 

>>>オランダレポート第二弾! 色々な豆、ナッツ、穀物も発酵! 有機テンペブランド「My Vegan Fam」

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