英大学で魔法とオカルト学の修士課程が2024年からスタート

イギリス南西部のデヴォン州に位置するエクセター大学(University of Exeter)は、アラブ・イスラム研究所にて「MA Magic and Occult Science(魔法とオカルト学の修士課程)」のコースを2024年9月から開講することを発表しました。

 

世界中の魔術の歴史と、社会や科学への影響を研究する魔法やオカルト学に焦点を当てた修士課程は英国初で、近年の社会における魔法に対する関心の高まりを受け創設に至りました。フルタイムで一年、パートタイムだと二年で修了するこのプログラムは、歴史、文学、哲学、考古学、社会学、心理学、演劇、宗教を用い、西洋と東洋における魔術の役割を明らかにします。

 

 

このコースのリーダーを務めるエミリー・セロヴ教授は、「学術界内外での魔法とオカルトへの最近の関心の急増は、今の社会において差し迫った問題の核心にあります。脱植民地化、代替的な認識論の探求、フェミニズム、そして反人種差別主義がこのプログラムの中核をなしています。」とThe Guardian誌に話し、この数十年の“現代人にとって魔術などは重要ではない”という「魔法やオカルトの研究を軽視する傾向」を覆したという考えを示しました。

 

セロブ教授は、縁起が良いとされる宝石を身につけたり、木に触れたり(※)、試合の日にはチームのジンクスを避けるために髭を剃らないなどの今も人々の間に根付く習慣を挙げ、「私たち自身の信仰や周囲の人々の信仰を表面的に見れば、(魔術が)今もなお私たちの日常生活の一部となっていることがわかります。責任ある学者たちは、このことを真剣に受け止めるべきです。」と述べています。

これは近年の民間伝承や魔術、タロット、クリスタルの人気の高まりからも確認でき、2022年に行われた国勢調査によると、英国では異教徒やウィッカン(ウィッチ・クラフトを信仰する人=Wiccan)と名乗る人の数が増加しています。

 

(※)諸説ありますが、イギリスでは良からぬことを耳にした時や、現実に起きてほしくないことを言ってしまった時に「Touch Wood(タッチウッド)」と言いながら木に触れる習慣があります。これは木や森には精霊が宿っていて、それが悪運や災いを遠ざけ守ってくれるという古い信仰が元になっていると言われており、今でもイギリス人の多くは不吉な発言をした時などは何か身近にある木製のものに触れます。

 

 

セロブ教授は、魔法とオカルト学の修士課程では“西洋は合理主義と科学の場所であり、それ以外の世界が魔法や迷信の場所である”という前提を再検証すると話します。さらに、中世・近世の歴史、文学、宗教、そして科学や哲学の歴史において、魔術やオカルト的な題材を扱ったテキストは”体系的に無視されてきた”という認識が学界内で高まっていることも述べました。

 

このコースでは、伝統的な西洋のアカデミックな方法論と、よりオルタナティブなアプローチを組み合わせることで、学生はパフォーマンス作品を通して論文を完成させることができ、クリエイティブな思考や分析的思考、好奇心、生涯学習などのスキルが身につきます。

魔法とオカルト学の修士課程は、情報解禁以来多くの関心を集めており、大学にはすでに100件以上の問い合わせがあったそうです。

 

 


文/西田宏次朗

参照サイト:https://www.exeter.ac.uk/study/postgraduate/courses/arabislamic/magic-occult-science/

https://www.exeter.ac.uk/study/postgraduate/courses/arabislamic/magic-occult-science/#entry-requirements

 

この記事がよかったらシェアしてください

latest issue

veggy 最新号

SNS

veggy SNS

Related posts

最新の投稿