アロハ!ハワイの夫婦「おひさまファームズ」代表のヒデキこと山根英樹です。前半は私の記事、後半は妻ユキの記事になります。私の方から今回はハワイの暮らしと月の満ち欠けの関係についてお伝えしたいと思います。
ハワイでは古代から日本同様に月の満ち欠けから季節や時間を把握し、農業や漁業に活用していました。魚を捕る場所と時期を判断したり、また農作物を植える最適な時期を見極めていました。
私はハワイ大学の農業スクールに通っている時に下図のようなMoon Calendarに従って作付けや収穫をすると良いと教えられました。満月の引力で地面が引っ張られる時には地中の水分も地表に集まり、植物も上へ上へと伸びようとして発芽が良くなるからです。また収穫した野菜や果物はみずみずしく美味しいです。
古代ハワイでは月の満ち欠けを30のフェイズに分けています。満月前後のHuaというフェイズからMahealaniまでが植え付けにベストな時期、KuluからLa’aupauというフェイズも次に良い時期とされています。私も実際に色々なフェイズで種付けをして比べてみましたが、確かにベストとされている日に植え付けをすると良く発芽し、その後もすくすくと成長しました。
Source: Kaulana Mahina (position of the moon), Kamehameha School, Midkiff Learning Center
https://khs-ksbe.libguides.com/c.php?g=1138713&p=8765017
またサーフィンを趣味にしている人には月の引力により変化する潮の満ち引きが大変重要です。というのも私がよく行くオアフ島のサーフスポットはほとんどの場所で海底が岩礁になっており、ちょっとした転倒が大怪我につながるからです。とは言え、波が立つのは浅いところなので、浅すぎず深すぎもない時間を選んで楽しむコツがあります。それはハワイのダイビングショップ、サーフショップなどで売られているTide Calendarを見て潮の満ち引きを目安にすることです。このようにハワイでは今でも人々が月の営みと共に生活をしています。
アラモアナのサーフスポットと海底の岩礁
さらに月の周りに虹の円環が見える現象をムーンボウと呼び、それはとても珍しい幻の虹と言われています。ハワイの神話では月に女神のヒナがいると言われています。ヒナは横暴な夫から逃れるためにムーンボウを渡って月までたどり着いたそうです。私の著書「ハワイに暮らした幕末漂流民の物語」の実在した主人公・五右衛門と結婚したハワイ人女性の名前もヒナです。五右衛門とヒナは時代に翻弄され愛し合っていたのに離れ離れになってしまいました。二人は月を眺めて遠くにいる相手を思っていたのかもしれません。
次号に続きます……ここからは妻ユキの記事をお楽しみ下さい。
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夫ヒデキに引き続き、おひさまファームズのユキです。ハワイも気温が下がり始めました。日本では秋冬の風物詩にさつま芋がありますが、こちらのスイートポテトは年中無休で人気です。
州内で流通しているスイートポテトには、アメリカ本土で主流のヤム芋ではないのにヤムと呼ばれるオレンジ色のものや、南米から日本を経由して持ち込まれた紫芋であるオキナワンスイートポテトなどがあります。ちなみに同じ紫色の芋であるフィリピンから伝わったウベは、さつま芋ではなくヤム芋です。私も幼い頃から日本のさつま芋が大好きでしたが、こちらではジャパニーズスイートポテトと呼ばれ、近年では「焼き芋」としても比較的安価で売られるようになりました。
日系の系列スーパー各店にて、年中手軽に購入できる日本風の焼き芋
若かりし頃の私にとって、日本の焼き芋屋さんが売る焼き芋は結構な高級品でした。「美味しそうだけど高いな……」と感じる時、「そうだ、今食べる必要はないのだった!」と、たびたび自制に努めていたものです。他者には不可解であろうこの道理のルーツは、幼い頃に読んだ有名漫画にあります。
今振り返ると私の通った小学校は、子どもに戦争の残酷さや命の尊さを心から伝えたいと願っていたのだと思います。それは図書館の本にも、毎年7月に歌う「青い空は」という曲にも、夏休みの登校日である8月6日に見る映画にも反映されていました。3年生の頃だったでしょうか、それぞれの教室が独自に設置する本棚には「はだしのゲン」が全巻揃っており、皆で奪い合うように読んでいました。言わずと知れた名著ですが、遊び盛りの子どもが休み時間を割いて自発的に読むのですから、その凄まじさは只事ではありません。そんな作品から私が受け取ったことの一つに、さつま芋があったのです。「もし戦争が起こったら、ゲンたちのようにさつま芋を嫌々食べることになるのだろうか。だとしたら、今はあまり食べない方が良いかなあ」などと、真剣に考えていました。
籠の芋はジャパニーズスイートポテト、下の広告はオキナワンスイートポテト
しかし時代が後退するかのように進んだ現在では、同じ状況になった時、さつま芋のような自然な作物の入手こそ難しいのかもしれません。なにせ私たちが暮らす世界では今、本来なら人間にとって必要であるものを冷遇し、不要であるはずのものを厚遇しているからです。ですから今後、どんな理由であれ食料の供給が止まる時、受け身でいることが何を意味するのかは大方想像がつきます。
「はだしのゲン」は、子どもだった私に大切なことを痛いほど刻みつけてくれました。戦争を経験していないのに生々しく蘇る感覚があるのは、他者の実体験の記録がトリガーとなって、私自身が先祖を含む集合的な記憶に繋がるからだろうと推断します。日本には今もまだ手の届く場所に、尊い書籍が数多く揃っています。歴史的に、特定の文明や国、あるいは思想を消滅させたい時、焚書が始まり、図書館が焼き払われます。そんなコントロールをうまく見抜き、先人が危ない橋を渡ってでも伝えたかったことを受け取ることは、今を生きる私たちの責任の一つだと思っています。
写真・文/おひさまファームズ
ヒデキ
サンフランシスコ生まれ。東京育ち。ホノルル在住。広告代理店、旅行代理店、豪州クィーンズランド州政府、ハワイ州政府農務省、イギリスの経営大学院、ハワイの大手銀行勤務を経て独立。コンサルティング、不動産、米国農務省統計局の調査員の仕事の傍ら農業に従事。著書に「小さな会社でもできる海外取引」「グローバル職人になろう!」「漂流アロハ」などがある。
ユキ
絵と音楽と物語の創作家、宇宙の神秘を読む夢想家。米国の大学を卒業後、神授的な創作の仕事に長く携わる。芸術分野の他、神秘哲学、占星術、数秘術、各種卜術、古代史、神話学、宗教学、図像学、色彩学などに明るく、食や代替療法も探究。タロットチャンネル「雪猫座 Hawaii」をYouTubeにて開始中。