アロハ! ハワイの夫婦「おひさまファームズ」代表のヒデキこと山根英樹です。前半は私の記事、後半は妻ユキの記事になります。
昔からちょっとした不眠に悩まされてきた私ですが、11年前にハワイに移住してからは特に快適な睡眠が取れていない気がします。周囲の人に聞くと同様に眠れない人が多いことに驚きます。薬局に行っても眠りに関するコーナーの大きさに、不眠に悩むアメリカ人が多いことがわかります。眠りに大切なのは暑すぎず、静かで暗い部屋と快適な寝具と言いますが、ハワイの場合は気温が高いので眠れないのかもしれません。
さらにハワイの人々は一日の行動を始めるのが非常に早く、早朝5時過ぎには家を出る人もいます。自分が州の公務員をしていた時には出勤が7時半だったので、車で家を出るのが7時前、起床は6時でした。日本にいた頃は朝7時半過ぎに起きて、8時過ぎの満員電車に揺られて9時に出社するというパターンでした。日本にいた時は眠りが深かったのか、就寝が午前12時とかでも平気でした。
これまでに天然由来の睡眠誘導成分であるメラトニン、グリシン、GABAなど色々試しましたが、どれも一時的なものでイマイチ効能が感じられません。しかしWhole FoodsやDown to EarthのサプリメントコーナーにあるKavaカヴァと呼ばれる植物のエキスを試したところ、これが意外と効きました。
左からメラトニン、カヴァ、グリシン
カヴァというのは学名:piper methysticumというコショウ科コショウ属に属する低木の一種です。これから作られる嗜好飲料やエキスに穏やかな鎮静作用・抗不安作用があるとされ、フィジー、トンガ、サモア、ハワイなど南太平洋の島々で宗教的・社会的な儀式において飲まれるとも言われています。カヴァはトンガ語で「苦い」を意味するそうで確かに泥臭い苦味がありつつ胡椒か山椒のようにピリッとする味です。
ちなみに妻のユキは、世界中どこに暮らしていても隣でぐっすり眠っているので、うらやましくて更に眠れなくなります(笑)。それを知っている彼女は、過去に「よく眠るためのリスト」を作ってくれましたが、私がそのどれをも未だに守っていないのが不眠の原因かもしれません。
ある日の家庭菜園から。トマトの苗の根元に米糠を肥料として施しました
次号に続きます……ここからは妻ユキの記事をお楽しみ下さい。
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夫ヒデキに引き続き、おひさまファームズのユキです。私が人生で初めて生来の菜食主義者に出会ったのは、若かりし頃のワシントンD.C.。インド系アメリカ人二世の彼女は、寮のルームメイトでした。片方の足にヒンドゥーのオームマーク、もう一方の足にはピースマークのタトゥーを入れた孤高の自由主義者だった彼女からはヒッピー系菜食を、そして鼻ピアスやビンディーを付けたサリー姿の厳格なその母親からは、伝統的なヒンドゥー系菜食を当時教わりました。正反対のパーソナリティを持つ親子ながら、どちらも老練した才女で見目麗しく、人を寄せ付けない気高さは同じでした。二人は一世と二世ならではの確執もあり犬猿の仲でしたが、私は双方と気が合いました。
それ以降、興味をそそられる食事法は独学し数年単位で実践してきた中で、個人的に思い入れがあるのは「ロー(ヴィーガン)フード」です。私の場合は「エンジェルフーズ」という呼び名で出会い、どこか特別な愛情を伴いました。それは例えるなら、最愛の透明水彩への気持ちに同様で、そのミニマルさと不自由さに潜む無限の可能性と創造性、そして透明度の高い精神性が愛おしい。ただ、前々回の記事(vol.14)で書いた「真に健全な分野は……」の標的であろうことは、アボカドの秘話(vol.5)やオーガニック系買収話(vol.12)などからも想像に容易く、そこは多角的な方面から目を光らせています。
最近の作品より、透明水彩で描いた写実的な「アボカド」
私は食に同じく、これまで数多の画材に親しんできました。中でも透明水彩との出会いは幼少期に遡りますが、それまた例に漏れず「とても不思議ないきさつ」なのです。しかしそれは別の機会に譲るとして、透明水彩というのは「最も手軽に見えて、最も難儀な画材」の一種です。計画性と偶発性といった相反を同時に必要とする上に、やり直しやごまかしもほぼ効きません。つまり常にチャレンジングで、完成の瞬間まで集中力が要求されます。
やや大袈裟に聞こえるかもしれませんが、それはまるで「神様を信じますか?」と、問われながら困難を乗り越える感覚であり、私の中では地球に生まれたことに通じてしまいます。そんな宇宙規模の世界観をローフードにも感じるわけですが、元来が自由すぎる雑食で住環境の変化も多い私は、ほぼローヴィーガンで過ごしていた時代もあれば、今現在は臨機応変時代を過ごしていたりと、それは自然に変わります。ちなみに昨今の私の料理は「ローミックス菜食」に仕上がることが多く、それが私の「現在形エンジェルフーズ」です。
ローカリフラワー米の稲荷寿司。豆とビーツの葉のスパイスカレーを乗せて
写真は最近作った創作料理で、生のカリフラワーを粉砕してマリネードしたものを油揚げの中に入れ、ビーツの葉と豆のスパイスカレーを乗せたものです。まさに上述の親子と私のような、ヒッピー系とヒンドゥー系と和食系の菜食ハーモニーになりました。「果たしてお味の方は……?」と期待せずに食したところ、その美味しさに自分でびっくり。とはいえ、基本的には都度手に入ったものと余りもので料理をするため一期一会的ではあり、直感で作業をしては新発見を楽しむ感覚です。ちなみに、ヒデキはヒデキで好きなものを調理しますので、互いの料理に関しては味見程度で終わります(笑)。
そんなわけで、「それぞれお好きなように!」というのが我が家のモットーではあります。ただ、ローフードや断食的な食事を一定期間でも自分なりに実践したことがある方は、人間がさほど食べずとも(時には逆に)元気に生きられることや、常識化された食や栄養に関する「神話性」も、心身が記憶しているはずです。そしてそれらは非常時ほど呼び起こされ、威力を発揮すると思うのです。「ブッダ的な精神」の発露とでも言いましょうか。
90%ローのヴィーガンコラードラップ。茎の部分も野菜スティックにして頂きます
特に疫病騒動以降、食に直結する第一次産業への攻撃と法の改悪の急加速が、西側諸国で著しく目立ちます。それらに並行して、人間が油断する日時と予期しない衝撃との最大公約数を、ある種の脳が常に予測していると私の神秘畑(=おひさまファームズの畑の一つ)はそっと伝えます。もちろんそれを信じる必要はありませんが、「これからは、人間の皮膚の下の情報も監視する」などと、過去に権威の類が公言したのは事実。そんな意地の悪い戦法が一部始まっているとしたら、備蓄等の危機管理をした上で、上述の「ブッダ的な精神で乗り切る覚悟」も一つ、緊急時の選択肢に入れておく必要はあると思っています。
写真・文/おひさまファームズ
ヒデキ
サンフランシスコ生まれ。東京育ち。ホノルル在住。広告代理店、旅行代理店、豪州クィーンズランド州政府、ハワイ州政府農務省、イギリスの経営大学院、ハワイの大手銀行勤務を経て独立。コンサルティング、不動産、米国農務省統計局の調査員の仕事の傍ら農業に従事。著書に「小さな会社でもできる海外取引」「グローバル職人になろう!」「漂流アロハ」などがある。
ユキ
絵と音楽と物語の創作家、宇宙の神秘を読む夢想家。米国の大学を卒業後、神授的な創作の仕事に長く携わる。芸術分野の他、神秘哲学、占星術、数秘術、各種卜術、古代史、神話学、宗教学、図像学、色彩学などに明るく、食や代替療法も探究。タロットチャンネル「雪猫座 Hawaii」をYouTubeにて開始中。