映画『ペーパーシティ 東京大空襲の記録』がシアター・イメージフォーラムにて上映

 

1945年3月10日午前0時過ぎ、アメリカは東京を襲撃し、木造の家屋や多くの紙材が密集していた東京に火の粉を浴びせました。日の出までに10万人以上の死者を出し、東京の4分の1が焼失した史上最大の空襲でした。そんな被害に遭いながらも、生存者である星野弘さん、清岡美知子さん、築山実さんの3人は、何年にも渡って、公的な慰霊、碑や博物館の建設、そしてすべてを失った市民へのささやかな補償を求めて懸命に活動を続けてきました。しかし日本政府は彼らの訴えを70年間認めようとせず、それらの要求は今もなお応えられていないのが現状です。その一方で、当時の元兵士たちは国から寛大な扱いを受けていました。

 

星野弘さん

 

清岡美知子さん

 

築山実さん

 

渋谷区、シアター・イメージフォーラムにて上映中のドキュメンタリー作品『ペーパーシティ東京大空襲の記憶』は、日本はもちろん世界中から忘れられた東京大空襲による悲劇の記録を残すため、長年戦ってきた生存者たちの最後の運動を追い綴った作品です。戦争や突然の無差別空襲によるトラウマや記憶、そして歴史を継承する国家の役割について、彼らの悲痛な証言や普段公になることのない映像資料、そして今日のアドボカシー活動の現状を織り交ぜながら、これまで明かされることのなかった東京大空襲の真実を探っていきます。

 

 

昨年始まったロシアとウクライナによる戦争から早一年、世界中が今も騒めく中、終戦から今年で77年となる日本において、改めて戦争とは何なのかを考えさせられます。

 

オーストラリア出身の映画監督エイドリアン・フランシスのメッセージ

広島の平和記念資料館やドイツのホロコースト記念碑、そしてニューヨーク9.11記念碑などは、世界中の人々が訪れて過去の出来事を知り、学び、犠牲になった方への敬意を払う場となっています。ですが東京大空襲に関しては、独立した公的な慰霊碑は建てられていません。

第二次世界大戦時、日本とオーストラリアは敵同士でした。なので私の出身国であるオーストラリアの学校では日本がどのような被害にあったかをほとんど教えられてきませんでした。ドキュメンタリー映画「フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白」を観たときに初めて東京大空襲について学び、たった一夜で10万人もの人かが命を落としたいう、言葉を失うような事実を知りました。東京に住み始めて15年。今思うのは、「歴史上もっとも破壊的な空襲」であったにも関わらず、東京の街にはその跡がほとんど残されていない、ということです。

 

 

生存者は生きているのだろうか。 東京大空襲を語り継ぎたくなかったのだろうか。それとも、忘れてしまいたかったのだろうか。

私は生存者の方々に連絡を取ることを決めました。オーストラリア人の私は、彼らに警戒されてしまうのではないかと不安でしたが、3人の生存者の方が当時の記憶や経験を語ってくれました。

彼らは後世にも記憶に残るものを残したいはず。何か大切なことを残したいという気持ちは、映画監督である私にも強く響きました。聞いてもらいたい、知ってもらいたい、覚えていてもらいたい。彼らが一番恐れているのは、自分たちが語り継がなければ、空襲がなかったかのように、私たちの記憶から消え、風化してしまうことだと感じました。

 

監督・脚本— Adrian Francis (エイドリアン・フランシス)

オーストラリア・アデレード生まれ。メルボルン大学、ドキュメンタリー映画専攻を卒業。15年前から東京を拠 点に活動。プロデューサーのメラニー・ブラントと共同 で、サンダンス映画祭でプレミア上映された、移民の清掃員を題材にした受賞歴のある短編ドキュメンタ リー「Lessons from the Night」を監督。彼の短編映画は、AFI Docs、Karlovy Vary、Edinburgh International Film Festival、Visions du Reel などの主要な国際映画祭で上映。べルリン映画祭のBerlinale Talentsに招待され、後に初の長編映画「Paper City」プロジェクトに参加。

 

 

 

2023 年 2 月 25 日(土)〜 シアター・イメージフォーラムにてロードショー

ペーパーシティ 東京大空襲の記憶 Paper City

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