読者の皆様お元気でしょうか?久々の投稿です。
今回は、オランダでの自然農体験記をお送りします。社会情勢がどうであれ、自活できる力があれば、越したことありませんよね。食の安全と文化への思いも込めつつ、お届けします。
自然農と共にある生活を、都市でトライする
2年前の春。私は生まれて初めて、農作業と共にある暮らしを経験しました。
コロナアウトブレイクで、勤務していたレストランの休業を余儀なくされたある日のこと。思い立ったが吉日。時間もできたことだし、と以前から気になっていた、オランダ・アムステルダム郊外のパーマカルチャーコミュニティーガーデン「Mijnstadstuin」に応募しました。
都市部の喧騒から約10kmほど西の海岸方面に向かうと、突如広大な緑が広がり始めます。そんな立地に所在する同所の一角・50平方メートルの畑を、幸い借りられることになりました。
大阪のベッドタウンで生まれ育った私。公園で毎朝屋外で太陽礼拝するのが日課だったり、自然のエネルギーを取り入れることが日常の一部ではあっても、ベランダ栽培すらままならず、都市生活を謳歌してきました。
ヴィーガンになって、外食の選択肢が減るなど必要性もあって料理にハマり、その延長でシェフとして仕事をすることにもなりました。
しかし、ただ料理をすることに限界を感じてもいました。
制限された食材の中で試行錯誤することは楽しいのですが、もし、自分で育てた野菜やハーブで、イチから一皿を作れたらどれだけクリエイティブだろう。そして、オフグリッドや自給自足のアイデアもずっと念頭にありました。
赤目自然農塾で自然農に出会う。
“耕さず、肥料・農薬を用いず、草々・虫たちを敵にしない”
不思議なもので、農業や自給に興味を持ち出し始めた時、知人のいざないで、自然農の祖・川口由一氏が主宰する、三重県・赤目自然農塾を訪れる機会がありました。
“耕さず、肥料・農薬を用いず、草々・虫たちを敵にしない” そんな自然農の理念と、同所での体験に強く感銘を受けた私。特にヴィーガンとして、生命との向き合い方には共鳴するものがありました。自然の営みは、既に調和している。手つかずの森を見ればわかるように、全ては循環し、豊かなのです。そんな経緯があり、いつか自然農やるぞと心に決め、その好機がやってきました。
▶︎ 畝作りからスタートです!
農作業をいざ始めると、洗礼の連続… 無知のほどを知りつつも、とにかく調べ、観察、考え、知恵に富んだ経験者に幸い教えを温かくも頂きながら、納得いくまで実践あるのみ。畑はまさに、「学びの場」。
畑のデザインからスタートし、畝を作り、種から育て、土を育て、全ての過程を経て、収穫に至った時。実りがなくても、それを省みる実りを得た時。そして、命を頂くこと。全てが初めての体験で、本当に豊かなことだと知りました。時間が出来たとはいえ、特に夏場のお手入れは途方も無く、フルタイム並みの忙しさ。
自然農は雑草を抜きません。植物たちは、根周辺に集まる窒素などの栄養をシェアしあいます。雑草は天敵だという一般論とは反しますが、土の下では、根同士が実は支え合っていたり。とはいえ、育てたい野菜の生育を優先させるためには、お手入れは必須。雑草の地表部分は刈り、それを土にかぶせて保湿&土に還る肥料として利用します。理に適ったサステナブルなアイデア!しかし、そのため、夏場はジャングルと化す訳です…
▶︎ 自然の循環作用により、自然と土の質が良くなるのですが、米ぬかを少し補ってあげることも、一つのメソッド。
今まで補うことのできなかったエネルギー
土を触る。微生物と語り合う。体を使う。アーシング。
以後、ビオマーケットで買い物をすることも、違う次元のものに。
私はまだ都市生活を続けていますし、100%自給は出来ないので、ありがたく利用しますが、口にする野菜が陳列されるまでのこと、生産者や産地、時期のことなどを以前より深く考えるように。献立を考えるのも、栄養素だけじゃなく、アブラナ科とキク科の組み合わせで、なんてことも新たな基準になりました。植物同士で成長を促進させたり、阻害させる組み合わせ(コンパニオンプランツ)があることも知らなかった私。
植物や自然が持つ魔法の奥深さに、また一段と魅了されるきっかけになりました。
▶︎ ビオマーケットで販売されている種
コミュニテイガーデンのいいところは、たくさんのガーデナーと出会えること。情報交換はもちろん、特にコロナ禍で特に人との繋がりが途絶えがちな中、緑に囲まれた安全な屋外空間で、他者と共通の意思を持って心を通わせられたこと、ちょっとした雑談だけでも、大きな癒しになりました。
ちなみに、自然農の大家・福岡正信氏のことは、多くのガーデナーが知っていた!れっきとした畑なのに、日本式・山笠帽+作業着+タオルの正装者はおらず、皆お洒落(笑)。作業を終えた夏の午後は、テーブルと椅子持ち込んで、白ワインを開けて、日光浴。
▶︎ 夏のある日、作業をしていると、ガーデナーランチに声を掛けて貰いました。スペイン人による本格パエリア(残念ながらベジでは無かったのですが)など共に、ありつけたヴィーガン豆ペースト、収穫したてのハーブ。この雰囲気でお腹いっぱい。
ヨーロッパで日本ごぼうが食べられるなんて!
日本は本当に資源が豊かなだなぁと感じます。梅雨があって、四季がある。気候が違うと、こうも栽培や収穫の結果が変わるのかということも経験しました。マクロビでいう「身土不二」の理解も深まります。長い冬や乾燥しているヨーロッパで手にできる野菜の種類って、意外と少ないものです。
「日本ごぼう」「紫蘇」など、こちらのビオマーケットではお目にかかれないものにも、なんとかタネを探して挑戦。収穫に至って、感涙ものです!
▶︎ 上)しそ 下)ごぼうタネ
収穫成功例:インゲン豆、トウモロコシ、枝豆、トマト、空豆、芽キャベツ、カブ、ラディッシュ、水菜、きゅうり、人参、いちご、ブラックベリー、キクイモ、パースニップ、コリアンダー、ディル、カレンデュラ、ヒソップ、カモミール、セージ、イタリアンバジル、ホーリーバジル……
「ダメ」だったのが、モロヘイヤ。決定的な温度湿度不足。陸稲も全然ダメでした。経験値がまだまだ足りません。
▶︎ 収穫した牛蒡で、自作おせち。伊達巻もヴィーガン仕様。
同所ディレクターにインタビューしました!
田中麻姫子(以下 田中):自己紹介をお願いします。
Sem Roefs(以下 Sem ): 私の名前はSem Roefsです。MijnStadstuinのディレクターです。
MijnStadstuinは、アムステルダムにある4ヘクタールの大きなアーバンファームです。私たちは都市農業のためのエコロジカルイノベーションラボです。目標は、アムステルダムの市民に持続可能な健康的な食品の生産と消費について教えることです。
サービスとしてガーデンを提供し、アムステルダムの人々が自然と調和して自分たちの有機野菜や果物を育てる方法を学ぶことを可能にします。
8つのエコプレナーがあり、それぞれがコミュニティ支援農業、独自にセレクトできるフラワーブーケガーデンなど、フードシステムに対して独自のソリューションを持っています。
彼らはまた、フードフォレストを持っており、地元の醸造業者のためにホップを生産し、緑の「廃棄物」から堆肥を作ります。
私は2019年にこのプロジェクトを引き継ぎました。人々がフードシステムについてもっと学ぶことが非常に重要であると思ったからです。
田中:当時設定した目標は何でしたか?そして、あなたは今それを達成したと思いますか?または、その変化を経験したことがあるかどうか教えてください。
Sem :私たちは日々、人々をますます学ぶことを目指しています。やるべきことはまだたくさんありますが、私はこれに一緒に取り組んでいる人々を本当に誇りに思っています。
田中:将来の野心はありますか?
Sem :スケールアップしたいですし、オランダのより多くの人々が新鮮で健康的で持続可能な果物や野菜を楽しむことができるといいですね!現在は、更に多くの実地体験やワークショップなど、学びの機会の提供し続けている。
▶︎ http://carlywollaert.com/
魅力的なプロジェクトがたくさん!ホットな都会のサンクチュアリ
▶︎ http://carlywollaert.com/
同所は、プライベートガーデナーの他に、商業農家や多数のプロジェクトも所在。
「Farm to table」をコンセプトに、音楽イベントやウエディングイベントオーガナイズも手がける「roots and remedy」、ブーケをその場でセレクトして作れる「Lokale Bloemetjes」、「de Stadsgroenteboer」、ミミズのコンポストプロジェクト「wormenhotel」(オランダ中に展開するが、ここが発祥の場!)などなど。
お隣には、広大な果樹園を擁し、リンゴ、梨、多種ベリー狩り、新鮮な平飼い鶏卵を購入できるアースシップ建築のファーマーズビオマーケット&カフェ「Fruit Tuin van West」、新設のビオホテル「The unbound」も。
センターから自転車でアクセス可能という距離なのに、日頃の喧騒を忘れられるオアシスのような場所。じわじわ噂や口コミが広がっているようで、同所の畑を借りるのに、ウエイティングリストは今や100人超え(!)の、ホットな”gezelig”(オランダ語で心地良い)スポットです。
Mijn Stads tuijn
NicoBroekhuysenweg 22. 1067HT, Amsterdam
ライター・田中麻姫子
大阪府出身。新聞記者として従事していた2011年、東北大震災をきっかけに意識と価値観の変容が起こり、ヴィーガンに。マクロビオティック、ローフードを実践。自他共に優しくあるため、サステイナブルな消費活動=出来る限りの未来への投資ライフスタイルを送る。宇宙や自然の法則、ホリスティックで有機的であることの意義を哲学し、感動する日々。
ドイツ・ベルリン移住後、ローチョコレートのケータリングなどを行い、2017年、オランダ・アムステルダムのKushi instituut併設レストラン「Deshima」勤務のち、現地でフリーランスヴィーガンシェフとして従事。himeee名義でDJや音楽活動も行う。オフグリッドを目指し、占星術&ビオダイナミッシュを取り入れつつの自然農に挑戦中。