イギリスのコロナウイルス

日本では緊急事態宣言が解除になりましたが、私の住むイギリスでは死者数が4万人を超え(6月6日現在)ヨーロッパでは一番多くの被害が出ており、3月23日から始まったイギリスのロックダウン(都市封鎖)がまだ続いています。しかし2ヶ月以上が過ぎ6月に入ってから段階的にではありますが、規制が緩やかになってきました。

ロックダウンが始まった当初は、同居家族以外の人とは親戚、友人など含めて誰にも会うことができませんでした。また祖父母に子どもを預けることも禁止されており、共働きの家庭では学校が休校の間、誰が子どもの面倒を見るのかが課題となり、親が交代制で休みを取るなどして色々と工夫をしなければいけない状況です。

公共交通機関の運行も大幅に減り、多くの人が在宅での仕事に切り替え、どうしても在宅で仕事ができない職種の人たちのみが仕事に出かけるよう通達が出ていました。

食品を取り扱うお店、薬局、病院等、生活に必要な場所以外は全て閉まり、街中はとても静まり返っていました。交通量も普段よりずっと少なく、いつも渋滞している道路もガラガラの状況が数週間続きました。

こうした中、政府の雇用に関する支援策は早くに打ち出されました。企業が従業員を解雇するのを食い止め、失業者が多く出ないように、給料の80パーセントが支給されています。この援助はこの先数ヶ月は続く予定です。

約6週間が過ぎた5月11日からは無制限での屋外での運動ができるようになりました。また職場に復帰する人たちは、出来るだけ公共の交通機関を使わずに通勤を再開することを奨励されています。

6月に入ってからは規制がもっと緩和され、屋外であれば最大6人まで人と集まることが可能になりました(ソーシャルディスタンスの2メートルは守って)。天候に恵まれていることもあり、初日から公園などではピクニックシートを広げて楽しんでいる人たちを多く見かけるようになりました。

殺菌効果のあるハチミツと免疫力を上げる食材

ロックダウンが始まる前後から、健康食品を扱うお店や、ハーブやナチュラルレメディーを取り扱うウェブサイトでは多くの人が大量に在庫を買い求め、品切れ状態が続出するという事態が発生しました。

特に殺菌効果が高いと言われるマヌカハニーは、値段が高い商品であるにも関わらず、売り切れになる店舗やウェブサイトが続出し、ちょっとしたパニックに近い状態でした。普段私の近所の健康食料品店の棚からマヌカハニーがなくなることなどないのですが、どこに行っても見当たらず、ネットでやっと買うことができたものの、出荷まで4週間待ちという状況でした。さらに買い占めを抑えるため、1人2個までという制限がついていました。

また生姜やニンニクといった免疫力をあげると言われている食材も一時期スーパーで手に入れるのに苦労しましたが、今は徐々に通常に戻ってきているようです。やはり多くの人がウイルスに打ち勝つために免疫力を上げることを意識していたのでしょうか。

学校の再開

そして6月1日からは段階的に学校の再開が始まりました。

段階的にというのは、一度に全ての生徒を通わせるのではなく、レセプションと呼ばれる小学校入学準備のクラスの子ども、1年生、そして6年生からまずは登校できるようになりました。ただし、1クラスに受け入れる人数が決まっているため、キーウォーカーと言われる医療関係者などの子どもたちが優先で、その他希望する子どもたちも受け入れます。ですが、限られたスペース内でソーシャルディスタンスを確保しながらですので、一度に全てのクラスメイトが同時に登校できるという訳ではなく、曜日ごとに交代したり、時間をずらしたりしてソーシャルディスタンスを保てるようにしなければならないため、まだまだ以前のような学校の風景とは程遠いものです。さらに今のこの状況でまだ子どもを学校に通わせたくない親は、引き続き家に待機させることも可能です。

レインボーはキーワーカーへの感謝のシンボル

イギリスが誇るNHS(国民保険サービス)も今回のコロナウイルスで大変緊迫した状況になっています。そんな中、医療現場の負担をなるべく減らし、自分たちも感染するリスクがあるにも関わらず、毎日人々のために働いている医療関係者やキーワーカーに感謝の気持ちを表すため、毎週木曜日の夜8時に家の玄関外に出て大きな拍手と歓声を送ろうという試みが、3月26日から9週間にわたって行われていました。全国各地で多くの人々が参加したこのキャンペーンは地域に一体感をもたらし、大きな成功を納めました。

また街中や個人の家の窓の外では、ロックダウンが始まって以降レインボーの絵を飾っているのを多く見かけるようになりました。レインボーは、緊急事態時でも働き続けなければならないキーワーカーと言われる人たちへのサポートと感謝を表現するシンボルとして使われており、子どもたちを含め多くの人が賛同しています。

このように今の自分たちにできる形で、キーワーカーを支援する試みで地域レベルで一体となり、この困難な状況に立ち向かおうという前向きな取り組みが印象的です。

ここ数日は、少しずつではありますが街中も人の姿が増えてきてはいます。しかし以前のように、ウイルス感染を過剰に心配することもなく、普通の生活に戻るにはまだまだ時間がかかりそうです。

プロフィール:デルガド倫子
2001年よりイギリス在住。ロンドンの出版社勤務を経て、フリーに。書籍、ファッション雑誌、カルチャー誌、メンズ誌、ウェブサイト等に幅広い分野でイギリスからの情報を提供。趣味は旅行、読書、片付け。




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