世界のVeggy Peopleに聞く、食とライフスタイル — ステフ・デイヴィス

ユタ州を拠点にするロッククライマー、ベースジャンパー、スカイダイバーのステフ・デイヴィス。世界的に最も注目される女性冒険家であるステフは、「個人のエンパワーメント(自信や力を与えること)」をテーマに、世界各地で講演会を行っている。 パワフルな活動家であると同時に、熱心なヴィーガンでもある彼女。厳しいパフォーマンスからすると意外とも思えるライフスタイルについて話を聞いてみた。ステフは自らの人生、ヴィーガンであること、そして自身の哲学について多くを語ってくれた。

Vegan by Accident
ヴィーガンという偶然

ヴィーガンになったのはちょうど7、8年前のこと。より良いクライミング・パフォーマンスを手に入れるため、優れた栄養摂取方法を求めていたの。私が知っている限り、その頃は誰も食に対するハッキリとした特定の考え方を持っていなかったわ。だから、肉食が強さの秘訣だと信じて食べ続ける人と、全く何も口にしないことで可能な限り軽さを手に入れようとする人に二分されていたの。 そんな状況の中で、真実が知りたくて自分なりに実験してみたの。3ヶ月ごとに異なる食生活を実践したわ。例えば、ゾーンダイエットプラン(たんぱく質と炭水化物の比率をコントロールする食生活)や血液型ダイエット(血液型によって異なる食生活をすること)、アトキンズ・ダイエット(低炭水化物食生活)……。でもそのどれも期待していた効果をもたらさなかったから、最終手段として断食をしたの。断食が終わったら、口にするものに対してものすごくうるさくなっていた。卵や乳製品が嫌とか、すべてが天然産物でないと駄目とか。つまり、身体が自然にヴィーガンになってしまったのね。 私にとってヴィーガンになるということは、いつも最後の手段だと思っていたの。当時は動物性たんぱく質が良いパフォーマンスの秘訣であるという考え方がとても強かったし、食生活を変える理由はより優れたパフォーマンスを手に入れることにあったから。 偶然にヴィーガンになったけれど、重要なのはそれがより良いクライミングをするために最高の食生活かどうかということだけ。だからその後も常に自分を観察したわ。そして数ヶ月が過ぎ、より良い状態であるということに気がついたの。以前よりもパワフルにクライミングできたし、素晴らしい効果だった。だから続けることにしたのよ。

From Physical to Ethical
フィジカル(身体)からエシカル(倫理)へ

身体の変化がきっかけだったけどヴィーガンになってから1、2年程たったあるとき、工場式農場について知る機会に出会ったの。私はそれ以前にも3年ほど菜食主義だった時期があったけれど、そのことについては何も知らなかったからすごくショックを受けたわ。 工場式農場について簡単に説明すると、アメリカで消費されている97%の動物性製品は工場式農場からきているということ。居心地の悪い状態から生き地獄のような環境まで、動物は本当に酷い状況にいるの。動物を殺すということだけが問題じゃないのよ。死は問題のすべてではないわ。なぜなら生きている存在はいずれすべて死に行くものだから。問題は恐ろしい在り方に生き物を強制する、ということなの。私は何があってもそれには関わりたくないわ。1度知ってしまったから、もう戻れないと感じるの。 だから今は、何よりもこれが理由でヴィーガンなの。それにプラスして、肉を食べないともっと健康になる、という感じね。それに精神面に対する影響も大きいと思うわ。他の生き物に害を与えてしまうと、それは自分に戻ってきてしまうの。そう思わなかったとしても、きっとどこかで自分が苦しむことになる。私は仏教の教えを信じているわ。悪いことをしたら、それは自分に戻ってくるということ。今の自分に、ないしは違う形で未来の自分に。

Better, Better, Better
もっと、もっと、もっといいこと

ヴィーガンであるメリットのひとつは、確実により良いパフォーマンスと健康を手に入れることができたこと。次に攻撃的でなくなったというのがあるわ。暴力を介したモノを食べると、その暴力が体内に入っていくのよ。動物が恐怖におののいて死んでゆくときは、大量のアドレナリンと緊張が放出されるため、化学物質が身体に充満した状態になると科学的研究からも示されているでしょう。動物を殺して、悪いアドレナリンや化学物質がつまったその肉を食べることは、明らかに自分の身体にも脳にもいいことではないわ。人間を攻撃的に狂わせてしまうと思う。 また、たくさんの量を食べなくなったのも良い点ね。絶壁や山をクライミングするときは、何でも自分で運ばなければならないから、食べる量が少ないと荷物が軽くてとても有利なの。身体がもっと効率的になるのよ。いい燃料を使うと、燃費がいいのと一緒ね。 そして何より、ヴィーガンというライフスタイルが私をより穏やかな方向に導いてくれた、と言えるかもしれないわ。歳を重ねること、成熟すること、哲学について学ぶこと……。そのような意識や肉体の変化とヴィーガンであるというメンタリティは少なからず相互に影響を及ぼしあっていると思う。常にチャレンジする冒険家としては、穏やかな精神状態を保つことは極めて大切なことなの。危険でストレスのかかるチャレンジに直面しているときは、もの凄いプレッシャーがあるから。そのときに穏やかになる方法を手に入れていることは、私にとってはすごく重要なことなのよ。

続く

【Profile】

ステフ・デイヴィス/Steph Davis
アメリカ出身のロッククライマー、ベースジャンパー、ウィングスーツ・フライヤー。フリーソロ(ロープを使わない)クライミングを専門とするトップクライマーでもあり、世界で最も困難とされる山頂をフリーソロで制覇。熱心なヴィーガンとしても有名。現在、恐れをどう超越し、飛ぶことを通して自由と進化を発見することについて綴る2冊目の本「Learning to Fly」を執筆中。

【Interviewer & Text】

堀江里子/Satoko Horie
パリ生まれの日本人。パラインパクト/ヨガジャヤのマネージングディレクター。世界各国を旅し、土着の文化に溶け込むことを楽しむ家族の元で、国際人として育てられる。南極以外の大陸をすべて旅した彼女は、未だ見ぬ土地や人々に接し、全く新しいモノの見方を発見することを愛してやまない。常に新しい領域や限界にチャレンジする人生の探求者としての日々を満喫している。
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雑誌veggy(ベジィ)バックナンバーVol.12より抜粋

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